藤馬はガトウ回収の期日を指定する。
なぜなら自分がガトウに大量虐殺プログラムを仕込んだあとで脱走されたから。被害のコントロールができず自分の立場が危うくなる。
藤馬は、ガトウ(人工人格)は自由にコントロールできて性能の高いものだと聞いていたのに、人間的な部分が残っているなんて話が違う、と思っている。
[01] (オープニングイメージ)雨の中、人間を惨殺する男の姿。殺したあとで、自分の行動に疑問を持つ――人殺しをして快楽を得ようとしている自分は何なのか、何かがおかしい。だから人型のhIEを殺すことで自分の欲求を満たしているのだ。
[02] 登悟、大学からの帰り道。ホロコスを使い男装した西園アキラと歩く。登悟はレポートが遅れているが他人の手を借りようとしない。登悟は本心では他人を信用できていないということを、アキラが指摘する(テーマの提示:信用とは何か? 静止=死 登悟は他人を信用できず、金しか信じようとしない)。警察が路地を封鎖している。遠視を起動して中を見ると、鋭利な切断面を晒したhIEの残骸が複数散らばっている。詠子からの連絡。事務所へ向かう。
[03] (きっかけ)事務所には今回の依頼者、(実は抗体ネットワークの)藤馬聖一が着席していた。藤馬は緊急の依頼だと話し、金に糸目はつけないという。藤馬はイライラした様子で、余裕がないように見える(ガトウがプログラム通りにグランタワーを襲撃すれば、多数の民間人の被害が出て、そのオーナーである自分は極刑は免れないから)。藤馬からの情報提供、軍によって人格を複製されたガトウ・シュライツ=エイトの回収を依頼される。藤馬の説明では、ガトウは暴走している戦闘サイボーグで、一切の理性のない怪物的存在とされている。藤馬は灼をhIEとは見抜けない(抗体ネットワークというhIEに憎悪を持っている人間でも灼が人工物だとわからない)。藤馬は見るからに『悪党』だが(悩みのとき)、詠子は依頼を受け、登悟と灼に調査を命じる(第一ターニングポイント)。
[04] (お楽しみ・Bストーリー)ガトウの痕跡を求めて、警察が管理する破壊されたhIEの元へと向かう。詠子に弱みを握られている警察官、時任(トキトウ、男)に秘密裏に管理されているhIEの元へと案内される時任は事が露見して自分の責任になることを恐れているが、詠子のことはもっと恐ろしい。機体ログへとアクセスし、ガトウの容姿と装備を調査する。全市中で検索をかけて、『Face Loader』経由で『仮面』のパーソナリティ分析も行い、ガトウの次の出現場所を予測する。灼が自分が囮となってガトウを釣り上げることを提案するが、登悟は抵抗感を覚える。結局、灼が自分は道具だからという主張を受け入れ、囮作戦を実行する。
[05] 灼をhIEと見立てて囮作戦を行い、ガトウを釣り上げる。だがガトウの戦闘能力は予想よりも高く、登悟は殺されそうになる。だが登悟の半身が生身であることに気付いたガトウは攻撃を止め、自分を止めてくれる可能性のある相手として、自分の主機メモリーをバックアップした媒体を残して立ち去る。ガトウの様子と、藤馬の説明の食い違い(ガトウは理性的に見える)からきな臭さを覚え、ガトウが残した記録媒体を灼に解析してもらう。
[06] ガトウが残した記録媒体から、藤馬は抗体ネットワークであること、ガトウはもともと本物の人間で、人格をコピーされた存在であること、報酬系を調整されて殺人衝動を覚えているということを知る。そしてガトウはグランタワーを強襲するために、自我を奪われ戦闘機械として稼働するようにプログラムされていることを知る。タイマーはセットされ、もはや一刻の猶予もない(ミッドポイント)。
[07] グランタワーに急行する。グランタワーはガトウの襲撃によってパニック状態になっている(迫りくる悪い奴ら)。登悟と灼は自我を失っているガトウを誘導し、施設の警備システムによって隔離しようとする。その過程で灼の右腕が切り飛ばされる(すべてを失って・死の気配)。隔離は成功するが、不利な状況で戦闘が始まることに、危機感を覚える(心の暗闇)。
[08] 登悟&灼とガトウの戦闘。灼が満足に動けないことで劣勢となる。灼は登悟を信用し、自分が囮となるように動く。行動予測を用いて灼とガトウの行動を計算し、ガトウを拘束するのだ。登悟はそのことに動揺するが、腹をくくってガトウと戦う(第二ターニングポイント。他人を信用するということ=成長)。未来演算をガトウに適用し(ガトウ=人の証明)、ガトウを拘束する。灼がガトウに接続し、報酬系の調整を超高度AI『仮面』の演算領域を使って行う。ガトウは正気に戻る。
[09] 藤馬にガトウの義体を引き渡すと連絡し(機体識別コードなどの証拠を添付し警戒を弱める)、呼び出す。正気を取り戻したガトウに復習のチャンスを与えるが、ガトウは藤馬を殺さずに拘束し、警察に引き渡す。他社に操られていた人格(ガトウ)は、登悟と灼の活躍によって、自分自身で選択することができるようになったのだ(フィナーレ)。
[10] 昼間。事務所の屋上でのんびりしている登悟と灼の元へ、報酬系を正常に戻されたガトウが訪れる。ガトウはその後、パシフィス市中に潜伏することになるらしい。ガトウは灼の右腕を切断したことを詫びる。ガトウが立ち去ったあと、灼は自分の存在(=人工人格)は人間なのか否か悩む。登悟は、ガトウとの戦いのとき、灼を信じたことを話し、「信じられるのなら、人間なんじゃないのか」と自問するように答える(ファイナルイメージ。他者を信用することができるようになった――だが灼は人間なのか?)。いずれにせよ、失われた灼の腕を作る必要があるのは確かだ。